『トップをねらえ!』
僕が昔からビデオテープが擦り切れるほど、くり返し何度も視聴を続けたアニメの一つである。
当時としては異例の女子が主人公のSFロボットアニメであるが、アインシュタインが方程式化した相対性理論というものなのか?一体どのような概念なのか?
光速になると、人にはどんなことが起こるのか?エーテル理論とは?
僕はこの重要な概念を『トップをねらえ!』で学ぶことができた。
最終話、12,000年後の地球に戻って来た主人公を迎える、片仮名のことばが、一文字だけ「逆さ文字」なのは、特定の文字文化が衰退してしまい、その時点で解読が困難だったからという神設定を垣間見た時、僕は感動のあまり涙を流した。
『トップをねらえ!』
庵野秀明(あんのひであき)氏が監督を務めたアニメである。
その後、NHK総合テレビジョンで、『ふしぎの海のナディア』と巡り合う。
このアニメは、小学校の教員職の母親も大好きだったため、毎週欠かさず視聴。ビデオも録画していた。当然ながら、何度も何度もくり返し視聴していた。
監督は、『トップをねらえ!』の監督と同じ、庵野秀明(あんのひであき)氏だったので驚いた。
その後、しばらく年月が経過、大学にアメフトのスポーツ推薦で入学後、再び庵野秀明氏が監督のアニメと巡り合うことになった。
『新世紀エヴァンゲリオン』である。
このアニメも当然ながら、全話全てビデオに収録。部活から帰った後、何度も何度もくり返し視聴していた。
ちなみに僕が、社会人になる時に、アメフト推薦での会社選定ではなく、一般の就職活動をしようと考えたキッカケ。
東証一部に上場している、玩具企業を第一志望として目指したキッカケ。それは、1997年の「新世紀エヴァンゲリオン劇場版シト新生」を観に行った時、初号機の限定フィギュアを購入したが、そのフィギュアの発売元が、その玩具企業だったからだ。
聖闘士星矢の時代から、お世話になっていた会社だったが、初号機ゴールドバージョンフィギュアのパッケージを目にして、「この会社だ!」とピンと来た。
「メルマガの文章が面白いね!」と、言って頂けることがあるが、恐らく僕の文章には、アニメではないのだが、庵野秀明氏の創りだすアニメ作品独特の「間(ま)」がほんの僅かに入っているからだ・・・と自称。(あくまでも自分でそう思ってるだけだが。)
それくらい、庵野秀明氏が創りだす、独特の「間」や「世界観」が大好きなのだ。
そんな、庵野秀明氏が監督を務め『シン・ゴジラ』の放映が開始。
「僕が観に行かないわけがない!」
放映開始当初から、観に行きたかったのだが、日本・香港ともに、タイミングが合わず、観ることができず。
今回シンガポールで、ようやくタイミングが合致し、観に行くことができた。
シンガポールの映画館で視聴する、『シン・ゴジラ』。
ショッピングモール「Bugis+」の映画館館『シン・ゴジラ』上映会場内に日本人は誰一人足りともいなかった。
しかし、シンガポール人が、声を出して喜んだり、笑ったりしていた。
『シン・ゴジラ』のストーリー自体は、表立ってのギャグの要素などは皆無。超ドマジメにストーリー展開されているのだが、なぜか笑ってしまう。。。
それはあまりにもすごすぎてつい笑ってしまうのだが。その感覚を、日本人の僕だけではなく、シンガポール人も分かってくれるとは。。僕は非常に嬉しかった。
ちなみに僕は、1999年新卒で玩具会社に就職、約12年間の勤務している中で、その大多数の時間を、営業&マーケティング職に従事してきた。
しかし、もともと僕は、クリエイターになりたかった。
入社当初一貫して、僕の希望は「企画開発担当」だった。
入社2年目、米国最大手玩具企業とのコラボを行う事業部で、念願叶って「企画開発担当」になれたのだが。この部署はもともと、オリジナルのクリエイティブな商品などなく、米国玩具のローカライズだけだったので、僕がイメージしていた「企画開発」の業務とは違っていた。
おまけに、英語が使えないから・・・という理由で、たったの4ヶ月間、期の途中で「企画開発」担当をクビになり。営業&マーケティングのセクションに異動させられた。
結局そこからずっと、約10年間、営業&マーケティング担当として業務に励むことになるのだが・・・。まさかその時は、営業&マーケティング担当になったことで、後々、結果的にクリエイターとしてのしごとができるとは思わなかった。。
日本人として初中国オリジナルロボットアニメプロデュース
実は僕は中国本土で3つの中国オリジナルのロボットアニメーション制作にプロデューサーとして携わった。
携わったというか、原作・ストーリー・基本設定・キャラクター・乗り物・ロボット・道具全てを総合プロデュースしてしまった。
なぜ、日本人である僕が、中国本土でそんなことをすることになったのか?まずはその経緯からお話させて頂く。
中国国家広電総局、各地のテレビ局を巻き込んだテレビ宣伝広告連動型の商品展開も、はじめのうちは良かった。
- 液晶携帯ゲーム:本物55万個・ニセ2,000万個
- 合体ロボット:本物120万個・ニセ3,000万個
- 変形ロボット:本物120万個・ニセ4,000万個
3プロジェクト程立て続けに、ミリオンヒット!
ニセモノ数千万個単位で、中国本土の市場で売れた。
しかし、あまりにも売れすぎて、目立ちすぎてしまい。途中から中国本土の企業並びに、競合他社にドンドンビジネススキーム自体を真似されてしまった。
真似をされる勢いがとにかくものすごくて・・・玩具業界のみんながみんな、そのスキームでやるようになってしまったのだ。
同じ事をするプレイヤーが増えれば増える程、スキームの効果は目に見えて激減。一日当たり同じ商品のTVCFが数十回も放映がかかっていた・・・あの頃は夢のまた夢。
とうとう、一プロジェクあたり、上海のテレビ局でも、一日一回、二回かかるかどうかの広告投入しかできなくなってしまった。。。
こうなってしまったら、このビジネススキーム自体を、戦略上のメインとして置くことはできない。
仮にこれが個人事業なんかだったら、一気に手を引くか、規模を縮小させれば済むことだが、僕が勤務していたのは上場企業。永続的に右肩上がりの成長を続けることが会社としても、現場としても求められている。
次の新たな手を先々に向けて打たなければならない。。
理想型を考えた場合は、日本から商品と連動する形で制作されたテレビ番組を輸入して、放映して、関連商品を売って終わりなのだが。中国本土では海外番組・・・特に日本の番組規制がものすごいことになっている。
国家広電総局が絶対に許諾をしない。
日本のテレビアニメが・・・危険性を伴うロボットアニメが、中国本土で放映されることなど、絶対にあり得ないことなのだ。
それでも、いろいろとできることはやって来た。テロップを全員中国人の名前にしたり・・・ありとあらゆる手を尽くして番組を輸入して放映をかけたりしてきたが、すべて途中でバレた。
既に全部対策されており、同じ手は使えない。そこで考えたのが、中国国内で築き上げた北京・上海・・・などの主要テレビ局と結託する形で、「オリジナルテレビアニメを作っちゃおう!」しかも、日本人である僕たちは表側には一切出ない形で。。。
同業他社が「三国志」アニメ数億出して制作してしまっていた件
ちなみに、同業他社さんは約数億円の出資をして「三国志」のアニメを僕たちよりも先に制作してしまった。
このアニメのクレジットにはしっかりと日本企業の名前が載っていた。
実際に国家広電総局の許諾も降りてテレビ放映も実現していた。
同時に、日本の日経新聞などではそちらが取り上げられていた。
けれども僕的には、こういうスキームは全く無意味だと話を聴いた当初からわかっていた。
なぜなら、そもそも「三国志」とか「水滸伝」というのは、中国本土の物語なので、誰一人として権利主張ができない物語なのだ。
すなわち、日本企業が数億円出資してアニメを制作&放映して、中国現地企業が関連商品を売りまくるという、図式が出来るのだ。
案の定、流通ではそうなっていて、日本企業の商品は全く売れていなかった。
逆に僕たちはこれに乗じて「Gロボット系」の関連商品を売ってもうさせて頂いたが。。。日本の考え的には「今のうちに投資しておけば人脈が構築できて、後に大きなことが出来る!」というのがあると勘違いしがちだが、移り変わりの激しい中国では、こう言う「カモネギ」的仕事をしてしまう人を、パートナーとして見てくれない。
一度「カモネギ」になったらずっと「カモネギ」なのだ。
最初から、自分がもうけられて、さらには周りにももうけさせられる・・・
そういうスキームを構築し続けられる人が、中国人であろうが、日本人であろうが、外国人であろうが、重んじられるのだ。
日本の別企業がやっていたことなので、傍から観ていて「残念だな・・・」とは思っていたが、まあ、やってるのが株式会社なので、本体に影響するわけでもなく、株価で回収するんだろうな。。。と考え、それはそれでありなのかとも思い黙視していた。
見栄も何もいらない実益をくれ作戦
一方、僕が組み立てるビジネスのシナリオはいつも非常にシンプル。
「同情するなら金をくれ!」ではないが、「見栄も何もいらないから実益をくれ」というもの。
- テレビアニメ制作の実績→中国本土の企業にくれてやれ
- テレビアニメ制作の権利→中国本土の企業にくれてやれ
- ストーリー・世界観・デザイン・アイディア・ノウハウ→中国本土の企業にくれてやれ* 世界展開のアイディア→中国本土の企業にくれてやれ
その代わり、TVアニメに基づき商品を開発して販売するから、商品投入時期のテレビ放映回数を保証して、商品が売れるよう最大限に強力してくれ!
という形で、日本の日経新聞に取り上げることはなかったとしても、マーケットでの実益を取る戦略を貫き通していた。
なぜなら僕のしごとはあくまでも、営業&マーケティング的概念がベースなのだから。。
その戦略に当時の僕の上司、支社長が全面的にサポートしてくれたこと。。
見栄よりも実益をとるお考えを持っていらっしゃったことが、一番のポイントでもあった。上司の協力・理解がなければ何もできない。日本企業なので。。。
こうしてプロジェクトは水面下でスタートしていったのだ。
その結果、中国本土で3つのオリジナルのアニメーション制作に携わることになった。しかも、原作・ストーリー・基本設定・キャラクター・乗り物・ロボット・道具全てを総合プロデュースしてしまったのだ。
つまり、庵野秀明氏と同じような立場である。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
早速、北京・上海など力のある、主要テレビ局と結託する形で、オリジナルアニメを制作することを検討始めた。
実は僕にはアニメマニアというもう一つの顔がある。今まで全話視聴したアニメは数百シリーズというレベル。
僕の場合のアニメマニアの方向性は、作品の名前、制作会社、主題歌、アニメキャラクターの名前や、声優さん・・・とかに詳しいわけでは無い。何分記憶力が人一倍悪いので、そういうのはほとんど覚えられない。
けれども、ストーリー設定、キャラクター設定、世界観、構成などの戦略・戦術・骨組みの分析が大好きなのだ。
- このアニメはこういう部分が人々の心を掴んでヒットした
- このアニメは何話でこうなってこうなるから面白くなる
- このアニメで語られている部分は人間そのものの真理をついている
というような感じだ。
かなりディープで、他のマニアさんたちと協調することの無い部分なのだが。。。
そして、、、クリエイターとして持っていた野望は、庵野秀明監督のように、自分が監督となって大ヒットアニメを自費制作すること。
なぜ自費制作なのかというと、通常アニメ業界はテレビ局、スポンサー、など様々な企業の協賛が無ければ制作できない。
そうすると、様々な方の「商業的意図」というものが「見えざる手」となり、クリエイターが本来制作したかったものを貫き通せないことが多々ある。
一昔前なら、テレビアニメの放映手段はマスメディアの一つ「テレビ局」や「映画館」が当たり前だったが、これからの時代はそんなマスメディアは必要無い。
サーバー世界を駆使することでいくらでも皆さんに視聴してもらうことができるのだ。。。
そう、これは儲け云々ではなくて、これぞ「ザ・アニメ」というのをもともと制作したかったのだ。
・・・そういう野望を秘め持っていた僕。
「アニメ制作のプロデューサーになってみる」そのチャンスが目の前・・・中国本土で突然到来してしまったのだ。
当然僕は玩具メーカーの人間。僕が中国でプロデュースするのは、商品を販売するために意図的に計略的に仕込む形で制作するアニメ。
けれども、贅沢は言ってはいられない。
プロデューサーとしての経験も無いのに、大きな夢物語を語りつづけていても仕方がない。
そして、アニメと連動する形で、商品化して販売する意図があったとしても、「制作したアニメーションを通して ユーザーの心を動かす」という部分は変わり無い。
「このシーンはこうあるべきだよ・・・」と他の方が制作したアニメーションを視聴して、評論しているだけの状態にサヨナラを。一歩前進できることは確かなのだ。
「チャンス到来!」とばかりに、独りニヤリガッツポーズを取る形で、中国オリジナルアニメプロジェクトを展開して行く決意を固めた。
こうして、約数年間の歳月をかけて、最終的に2つの大手テレビ局と共に、3つの中国テレビオリジナルアニメを制作することになった。
- 北京テレビと共に、『クリスタルウォーリアー』日本の戦隊ロボットのようなシリーズ* 広東テレビと共に、『スヌーカー魂』ビリヤードロボット
- 上海テレビと共に、『太陽系ロボ』太陽系の惑星がロボットに変形
中国本土で制作したアニメ。。連動する形で、玩具商品も制作し発売した。
ただし、僕は2010年に副業が発覚して、会社を「円満退社」に。実際に僕が在籍中に中国本土でテレビ放映がかかり、商品流通に発売されたのは。北京テレビと共に制作した『クリスタルウォーリアー』日本の戦隊ロボットのようなシリーズのアニメと玩具。
それ以外の2つのアニメ&玩具は、僕が会社を退社後に、テレビ放映と商品流通することになった。
3つの商品共に、中国本土だけでなく、日本以外のアジア各国にも輸出され販売されていたので。僕は会社を退社した後に、シンガポールの玩具売場で、商品が発売されているのを目にした。
アニメプロデューサーとして庵野秀明氏に近づけたのか?
3つの中国オリジナルアニメ制作に、プロデューサーとして携わり、日本から離れた、中国本土という地ではあるが、夢物語だけではなく、テレビアニメ制作、玩具商品化、2つの視点で実現化させてしまったわけだが。果たして、肝心の制作したアニメのクリエイティブの部分はどうだったのだろうか?
学生時代から、憧れていた、庵野秀明監督に、少しでも近づけたのだろうか?
結果は・・・ある意味僕は、日本人として「神アニメ」を制作してしまった。
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴ
・・・日本人が裏で制作に関わっているとは、思えないほど、ムチャクチャな内容のアニメを制作するに至った。
庵野秀明監督要素ゼロである。というか、僕が創りたかった世界とは、まったく違うものが完成し、テレビに放映されていた。
なぜ、そんなアニメになったのか?
言い訳・・・挙げだせば沢山あるのだが。一言でいえば、実際にプロジェクトに携わってみて、「良いアニメが日本でしか制作できない理由が良くわかった。」・・・と言ったところだろうか?
北京テレビと一緒に制作した、『クリスタルウォーリアー』に至っては、そのヤバさ具合はSS級で。仮に今、ニコニコ動画とかで放映されたとしたら・・・。
しかもそれが、五体変形合体ロボット五体変形合体飛行機・・・などを始め、大真面目に100種類を超える商品数で日本の玩具メーカーから商品化されているとしたら・・・。
「なんじゃこのアニメ、ヤバイ、神過ぎる!しかもこんなに凄い合体ロボットが・・・。」
・・・と、ボコボコに叩かれながらも、拡散するのでは無いかと、思える程。。。
僕自身、アニメを何度視聴しても、あまりの設定崩壊具合に、「精神汚染」状態に陥ってしまう。
ある意味、日本人として・・・庵野秀明監督が、世界で最高峰のロボットアニメをプロデュースしたとしたら。
真田孔明が、世界で最低のロボットアニメをプロデュースした。恐らく、僕が制作に携わった、アニメを下回る本格的なヤバイロボットアニメは、今後も出現しないのではないだろうか?
ある意味、僕はプロデューサーとして、 アニメ業界で、「世界一」を叩きだしたことは確かなようだ。
フー。
全て中国オリジナル。。。ということになっていてヨカッタ。
日本のアニメ業界の歴史には、傷はつかない。。シンガポールの映画館「Bugis+」にて、庵野秀明監督の「シン・ゴジラ」を興奮しながら視聴しながら。アニメプロデューサーを目指した過去を思い出してしまった。
ちなみに、北京テレビと共に制作。真田孔明プロデューサー第一弾、「世界一ヤバイロボットアニメ」は、北京テレビからプレゼントしてもらった、豪華絢爛の全話DVDセットが
今でもマレーシアジョホールバル自宅倉庫の中で眠っている。(このロボットアニメのビデオは、中国本土でも発売されていた。。)
あなたは借金が怖いですか?
私は死ぬまでに<1,000兆円>の借金をすることが夢なのですが…