「ピンポーン」
部屋のチャイムが鳴る時だけ、ドアを開けることが許される。ガチャリと開けて、左側を見ると、白いビニール袋がかかっている。僕たち監禁者たちへの餌(えさ)の配給だ。朝食、ランチ、ディナーの1日3回。
新しい餌(えさ)が入った新しいビニール袋を取り出し、もろもろのゴミや残飯、プラスチック容器などが入ったビニール袋を変わりに床に置く。
終えたら、直ちに扉を閉めなければならない。
「このまま廊下を出て、エレベーターを駆け下り、外に飛び出してみようか・・・」
廊下を見ると、フトよぎってしまうが。右上でに取付けられた、名前、日付、番号が入ったピンク色のリストバンドを見ることで我に返る。
仮にルール違反して、脱走しているのが見つかったら、最大2年間の「リアルジェル」行きになる恐れがある。今はまだ、その時ではない・・・。目を閉じ、観念をして再びドアを閉める。
毎日眺める同じ部屋、同じベッド、同じテーブル。
「餌(えさ)にありつけるだけシアワセだと思おう・・・」
ビニール袋を開封して、餌が入ってずっしりに手に来る中のプラスチックBOXを取り出す。
前進防菌服に身を固めた「検疫官」たち
「ピンポーン」
滞在2日目、部屋のチャイムが鳴った。
「あれ?餌の時間ではないな。」
しかも、しばらくすると、トントンとドアをノックする。ドアを開けてみると、頭から足元まで、全身「防菌服」で身を固めた男たちが2人立っている。
「ここにサインをしてください(英語)」
紙を差し出された。紙ヘッダーを見ると、「MINISTRY OF HEALTH MALAYSIA(保健省)」と書かれている。既に僕の名前、パスポート番号、そして「検疫所」として、今回僕が選択した「HOTEL SAMA-SAMA」ホテルなどの情報が刻印されている。
ざっと目を通すと、※以下重要部分だけ抜粋
- 監視&観察期間について:12月2日〜12月15日の14日間。
- リストバンドについて:上記期間「リストバンド」を良好な状態で維持することが義務付けられる。
- スマホに「MySejahtera」アプリをダウンロードして常に電話がつながる状態にしておくこと。
- 監視&観察期間中発生した「コロナテスト」について全ての費用を自己負担すること
- 18歳未満の帯同者について
- 「命令違反」した場合罰則があること
・・・などなどが記載されていた。
当然ながら、これは「要請」ではなく、「命令」なので、サインをするしか選択肢は無い。そのままサインをする。
そして、右手首にはピンク色の「リストバンド」をはめられた。自分で一枚持っておくことになるが、これは最後に「リストバンド」を「保健省」の職員さんにカットしてもらう時に返却するようだ。
ちなみに、チェックインの際に、ホテル側から渡された書面には、
- 部屋から一歩も出てはならない、廊下もダメ(当然ロビーも外もダメ)。
- 訪問者は禁止。
- 違反者には最大2年の投獄
- 毎日8時〜10時の間に体調を伺う電話をする
- 食事
朝食:8時〜10時
ランチ:12時〜14時
ディナー:19時〜21時 - 外部からのデリバリーは禁止
- ルームサービスはOK
- ハウスキーピングは全て自分で
- 洗濯サービスはなし
- 禁煙 ・・・などが記載されている。
独り部屋の中、ピンク色の「リストバンド」を見つめながら、14日間もの間、監獄的な生活を送ることになるということを、改めて再認識させられた。
心身維持に必要な「エネルギーチャージ」
独房で生き残り続けるために一番重要なのは、時間になると一方的に配給される餌(えさ)の中で、どう心身の健康を保ち続けるか?
重要なものを順番に挙げると、水分、タンパク質、野菜、炭水化物。
『水分』
幸いなことに、もともとマレーシアの水はそれほどヤバくない。HOTEL SAMA-SAMAの水道水も「そのまま飲めますよ!」と記してある。湯沸かしポットは元々部屋についているし、『折りたためるトラベルケトル』を持参して来た。水道水を沸騰すれば、何の問題も無いし。
配給ビニール袋の中には、毎回500mlの水ボトルが入っているし。足りなかったら、フロントに言えば届けてくれるとのこと。「差し入れ」や「外部デリバリー」は禁止されているが、持ち込み持参品にはうるさくない。
カップでお湯を注ぐだけで完成するスティック状の「粉類」は日数分持参済み
・青汁
・ヘルシアコーヒー
・スタバのイタリアンローストコーヒー
・緑茶
バリエーションも申し分ない。
ただし、一日一回配給される「コカ・コーラ」や「スプライト」は「糖分の過剰摂取」に陥ってしまうので、口につけないことにした。
『タンパク質』
配給される「餌(えさ)」の中で最も重要なのは、タンパク質。
幸いなことに、ここはマレーシアで「ハラル」。鶏肉、お魚、意外とシンプルで良質なタンパク質を毎回配給の度に摂取できる。これは残さず全部食べることにする。
『野菜』
元々マレーシアの野菜も現地で採れた新鮮なものが多い。毎回配給の中に、生サラダや煮込んだ野菜が入っているので、これも確実に摂取する。毎日いっぱいの「青汁」も補助としてお湯で粉を溶かして食す。
『炭水化物』
最もコントロールしなくてはならないのは「糖分」。配給される餌(えさ)の中には、ご飯物が出た時も、パンもセットでついてくる。
まず、このパンは食べないことにした。ご飯物は、事前の調査によって、洗うと油が浮く的なことを聴いていたので。日本からステンレス製の網を持参。
全部食べると多すぎるので、適正な量を網の中に移し、お風呂場でお湯で洗う。タイ米的なものとマレーシア米的なもの、大きく分けると2種類。
すると・・・確かに情報通り一見すると普通の白米に見えて、なぜか沢山の謎の油が浮かんでくる。その後、予め日本から持参した、「永谷園の梅茶漬け」をふりかけ、熱湯をかけて食す。
たまに、「豚汁」にして、ぶっかけご飯。これが意外と、タイ米でも美味しい。これ一つテコ入れするだけで、日本食のように錯覚できる。
『デザート』
フルーツ、プリン、ゼリー、ヨーグルトなどが毎回一つついてくる。りんごなどのフルーツは皮ごと出てくるので、予め持参したボールにいれて、熱湯をぶっかける。
すると、真っ赤なリンゴから、なぜか赤い部分が落ちて、天然リンゴ的な色になる。着色料でもついているのだろうか?
一度熱処理をして、皮についてる謎の物質を落とした後は、皮も身も柔らかくなるし、煮リンゴのようになる。そのまま、安心してガブリつくことができる。
・・・以上によって、食事面では逆に普段よりもバランスの良い感じになっていると思う。とりあえず、餓死することはない。逆に栄養分の過剰摂取に気をつけないと。
独房生活は、圧倒的に運動量が少なくなるので、エネルギー消費とのバランスを考えながら。
エネルギーを消費しながらの「武者修行」
部屋から一歩も出れない独房生活で一番の問題は、圧倒的なる運動不足。基本的には、ベッド・バスルーム・テーブルの三箇所しか移動する場所が無い。
部屋の中を歩き回るのもなんだし、とにかく体の中で、一番大きなパーツを動かすことにする。昔、入れられた刑務所の中で、独り修行に励む『軍鶏』という漫画があったが。あの修行シーンを妄想しながら、
「底辺から這い上がってやるぞ!」
的な心境に持っていきながら、ギラつくハングリーな眼差しイメージで「スクワット」と「腹筋」を行う。
下腹部から下半身にかけて血が巡るのを感じると、闘争心が高まってくる。心身共にエンジンがかかって来た後は、「たった一台の、目の前のこのパソコンでのし上がってやる!」的な、荒れ果てた貧民街の掘っ立て小屋の中、貧乏どん底から這い上がってやる的な妄想をしながら。
パソコンに向かってパチパチとお仕事的なモノに没頭する。幸いなことに、一時的にホテル内のWIFIが故障した時、通信が脆弱になった時はあったが、基本的にはWIFI通信環境は良好。
唯一の外界との接触方法なので、そのありがたみを噛み締めながら。日常的に家族ともZOOMでつなぎつつも。決められたミーティングの時、セミナーなどを開催する時、ZOOMを通して、仲間たちとの交流もルーティンで行う。
僕たち的には、「在宅ワーク」を10年前から推奨して来たこともあり、今に始まったことではない。むしろ、こういうご時世になったからこそ、本来「在宅」で何ができるのか?何をやるべきなのか?改めて真摯に見つめ直すことができるのではないだろうか?
「インターネット接続」が可能な時代に生きていることに、ありがたみを感じながら。やることをひとつひとつ丁寧に。
あくまでも、「実力値」を積み上げるべく、アウトプットに傾注する。運動とお仕事、アウトプットに励んだ後は、「バスタブ」に熱々のお湯をはり、洗濯したい下着や上着を着たままザブンと浸かる。
これは旅の多い、僕流の洗濯術であるが、自分の身体を洗うのと一緒に、着たまま身体ごと洋服を洗う。バスタブの中で、上着、下着、ふんどし順番に脱ぎながらお湯でゆすいだ後、水気を絞って干す。沐浴と洗濯を一度におわらせる。
・・・ということで、
今回はマレーシア渡航において飛行機代を抜かして、コロナ検査+「HOTEL SAMA-SAMA」隔離費用三食付で約17万がかかっているが。
人生の中でも、はじめての体験、「マレーシア独房ツアー」として、思う存分愉しむことにした。
YouTube動画:「コロナ渦・マレーシア渡航編」
その1:
日本の感染者15万人突破の日到来、マレーシア入国できるのか?挑戦
その2:
日本感染者15万人突破確定当日にマレーシア入国挑戦
あなたは借金が怖いですか?
私は死ぬまでに<1,000兆円>の借金をすることが夢なのですが…