~会員27万人ビジネスマッチングサイト@SOHOを1人で立ち上げた不器用な男の過去を正直に告白~
男がまだ就職活動の真っ只中だった時のこと。
ある日、ふとコンビニに立ち寄ると、リクルート社が発行していた『アントレ』という雑誌が目に入った。
この雑誌には起業情報が満載されていて、まだ一度も自分でビジネスを立ち上げたことのない男にとって、わくわくするような未知の話が盛り沢山だった。
- 飲食店
- 学習塾
- 英会話教室
- パソコンスクール
- フィットネスジム
- マッサージショップ
- 整体院
- 質屋
- アパレル
- 旅行会社
- 古本屋
- 中古自動車販売
- 士業
- 経営コンサルタント
- 芸能プロダクション
- ホームページ制作
- ネットビジネス
などなど、ありとあらゆる分野の成功者達が取り上げられ、まぶしく見えた。
その中でも目に止まったのは、芸能プロダクションを経営している、23歳のS社長。
S社長は中学時代から役者を目指していた。本格的に活動していたものの、芸能界というところは実力がある者が必ず成功を掴み取れるのではなく、影響力のある人間の主観で物事が決まっていく、という不合理な事実に落胆し、
『それでは、自分がその影響力を持てる人間になろう!』
と決心し芸能プロダクションを立ち上げたという。
S社長の会社は、株式会社。
当時は、株式会社を立ち上げるためには、資本金1,000万円が必要だった。
男は、S社長が23歳という若さにも関わらず、どうやって1,000万円というお金を作って、株式会社を立ち上げたのか?
そしてS社長はどういったビジョンを持って、会社を経営しているのか?
という点に非常に興味を持ち、S社長にどうしても会ってみたくなった。
S社長の会社は、まだホームページも無さそうだ。アントレ上には電話番号とFAX番号しか書かれていなかった。
『いきなり電話しても、門前払いされそうだな・・・』
男は考えた。そこで、S社長宛に手紙を書くことにした。
内容としては、
- アントレの記事を読んで感心したこと
- 自分も起業を考えていて、S社長の起業についてお伺いしたい
といった内容を、素直に書いたのだった。(これで返事が来なければ諦めよう。)
ダメ元で出して待つこと1週間。な、なんと、S社長から返事が届いていた!
お世辞にも綺麗とは言えない文字だったので、これはまさに、S社長の直筆なんじゃないだろうか?
男は心臓の音が外に聞こえるような感覚を覚えながら、早速、S社長の会社に電話し、アポを取った。
S社長の会社は東京にあった。わざわざS社長に会いにいくために、往復の飛行機代を捻出する余裕も無い。
そこで男は考えた。(よし、P社の最終面接と抱合せにしよう。)
バカ正直過ぎて本音と建前の使い分けを知らない男の就職戦績はことごとく敗退。
-
野村総研→エントリーシートが複雑過ぎて挫折して断念。
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フューチャーシステムコンサルティング(現:フューチャーアーキテクツ)→2次面接に「ラフな格好で来てください」と言われ、当時お気に入りだったレインボーカラーのTシャツとブルージーンズで参戦し、敗退。
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リクルート→2次面接がグループディスカッション。時間に少し遅れて到着してしまい、さらには暑かったので上着を脱いで臨む。その姿勢がNGだったのか?この時点で敗退。
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三菱商事・三井物産・住友商事・日商岩井(現:双日)→書類選考で落選。
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伊藤忠商事→九州での最終選考で、超優秀な同じ九大の大学院生とダブル面接で、敗退。
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ギャガ・コミュニケーションズ→1次選考(ビデオで自己PRを送付→通過)2次選考(グループ面接 in 東京→敗退)
その他、いろいろ応募したと思うが、後は覚えていない。
なにしろ、面接の場で、自分が将来独立を考えていること、そしてなるべく早くそれを考えていること、を堂々と語っていたのだから・・・
その中でも、P社は人事部長が男の心意気を買ってくれて、東京での最終面接にまで通過したのだった。
男はその最終面接の際にも、時間を勘違いしてしまい、羽田空港からタクシーで銀座にある本社まで駆けつけることに・・・(そのタクシー代も、人事部長の配慮でその会社持ち。)
男は最終面接を終え、スーツから持ってきた私服に着替え、そのままS社長のオフィスへと向かった。
オフィスに到着すると、事務の女性が出迎えてくれた。女性は「いかにも制服」という感じの、少し古臭い服を着ていた。
応接間に案内され、女性がお茶を出してくれた。
次に、専務という名刺を持った60歳ぐらいの老人が出てきた。
S社長はまだ外出しているということで、それまではこの老人が対応してくれるという。
専務は、一度定年退職をした後、S社長の会社で働くようになった、ということだった。
男は思わず聞いてしまった。
『あなたはなぜ、S社長の会社で働こうと思ったのですか?』
専務は言った。
『S社長の理念に共感したからです。』
男は、S社長の父親以上の年齢の老人が、S社長の下で働いているという関係が、とても不思議に思えてならなかった。
そうして、いよいよS社長が到着した。
男の緊張は一気に高まった。
アントレに掲載されていた、役者を目指していたという経歴にふさわしい、イケメンS社長がそこにいた。
S社長は、男の顔を見るなり、
『老けてるな。』
とつぶやいた。
確かに当時の男は、22歳とは思えないほど老けていた。逆にS社長はとても若々しく、一見するとお互いの年齢が逆のようにも見えた。
男は手元のメモを頼りに、少しどもりながら、S社長に質問をしていった。
S社長は見た目こそ若かったが、たった2つしか違わないとは思えないほどとても落ち着いていた。
男の性格は本来超がつくほどの負けず嫌い。たった2歳しか違わないS社長と自分の差が何なのかを、対話の中から導き出そうとしていた。
凄い人に出会うと、いつもこうだ。表面上では笑っていても、心では決して笑っていない。
面の皮の下で歯ぎしりをギリリと言わせながら、相手と自分との差分を埋めるべく、全神経を相手の話に集中。
そしてついに、核心の質問に入ったー。
男:『S社長は、どのようにして資本金1,000万円を貯められたのでしょうか?』
S社長は少し時間を空けて口を開いた。
S社長:『需要と供給の関係ってわかるかい?』
男:『は?』
資本金1,000万円をどのように調達したのかを聞いているのに、あまりにも俯瞰レベルが高すぎる回答。男は何と答えて良いかわからなかった・・。
S社長が続けて口を開いた。
S社長:『実家の親が持っていた土地がちょうど区画整理の対象となったので、僕が交渉して、1,000万円を作ったんだ。』
(す、凄い。)
S社長がこの交渉をしたのは、まだ高校生の時。
男など、部活のバレーボールに明け暮れ、学校の成績に悩んだり、友達との人間関係に悩んだり、ごくごく普通の学生生活を送っていた。
(なんて大人びた人なんだ。)
もっと突っ込んでS社長にいろいろ話を聞きたかったが、30分という時間はあっという間に過ぎてしまった。
S社長は、男がスーツを持参していたので、就職活動のために上京していて、そのついでにS社長の会社に寄ったということを、見抜いていたようだった。
別れ際にS社長はほのめかすことを言った。
S社長:『君が今日ここに来た理由は、他にあるんじゃないかな。』
これを聞いて、男は思った。
(もしかして、誘われてるのかな?)
男はここでS社長に、『ここで働かせてください!』と直談判することも考えたが、その場ではそこまで意思決定することはできなかった。
S社長のもとで働くことができたら、大きな成長を遂げることができるかもしれない。でも、まだ男には、そこまで決断する勇気は無かったのだ。
男は福岡に帰った後、別の人生を歩んでゆく。。。
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