朝、合流したのは、P.Z.R.と、東大の2人。
今日の僕たちの精神は、「戦後」よりも遥かに時代を遡って、狩猟時代にタイムスリップ。
これから、僕たちが繰り出すのは草原。
手元には食べ物の類は何も無い。
「朝食」だとか、「ランチ」だとか言われるもので、毎日何も獲物を狩らなくても食べ続けられる時代に生きる不思議な夢を見たが。
「狩猟時代」の今は、自分たちで獲物を狩らなければ食事にありつけることは無い。
今日も僕たちは朝から獲物を狩りに行く。
僕たちは生きるために食べる。
食べるために獣を狩る。
そんなある意味純粋な日常。
村から移動すること約1時間。
ようやく、僕たちは草原に到着した。
(バンコク市内の「ゴルフ場」へ)
今日 僕たちが手にしているのは、「石斧」とかの旧時代の武器ではない。
最新鋭の「投石器」。
棒を振りかぶった勢いで、地面に置いた石をぶつけると、獲物めがけて石が飛んでいく。
今までは、石斧を振りかざして獣たちに近づいていっても、
逃げ足の早い獣クンたちには、すぐに逃げられてしまっていたが。
「投石器」であれば、僕でも最大200メートルヤード位遠くに獲物がいても狙うことができる。
なんでも、とある村の勇者は、300ヤード以上遠くの獲物も狙い仕留められるようだ。
羨ましい。。
僕たちもそういう勇者になってみたいものだが。残念ながら、僕たち3人は狩りをはじめて1年やそこらの若手。
(ゴルフ歴約1年~1年半)
たまにうまく飛ぶこともあれば、飛ばないこともある程度の至らぬ腕前。
獲物を標的に定めて投石しても石が狙ったところにはうまく飛んでいかないので、仕留められない状態。。
(「パー」を獲ったら見事獲物獲得成功という妄想設定。)
3人が訪れた草原は沢山の獲物が出現する狩場として、既に有名な狩場になっているようで。各村から訪れた、熟練の腕自慢たちも多く集まって順番待ちをしている。
狩場なりの暗黙の了解的なルールというものがあり。「投石器」で射出した石が、誤って他の村の狩人に当たらないよう。互いにしっかりと300ヤード以上の間隔を開けることが求められる。
この草原の狩場では、近隣の村の女性たちが、わずかな「肉の分配」をあてに、狩りをお手伝いしてくれるようだ。
(キャディさんにはチップを忘れずに!)
獲物までの距離を目視で計測してくれたり。
外した石を一緒に探して拾ってくれたり。
彼女たちが操作する馬(カート)に乗せてくれて、獲物に気づかれないギリギリの距離まで運んでくれたり。
何よりも、誤って射出した石が他の村から来た狩人たちに当たらないよう。
投石を行う前に、シッカリと距離を確認してくれる。
荒れている狩場では、石が他の村の狩人に当たる事件も起きており。
村と村の抗争に発展したことあると噂に聴いたことがある。
「投石器」という、便利な文明の叡智の出現は、喜ばしいことであるが、それ相応のリスクも新たに出てきてしまうようだ。
(前の組にボールを打ち込まないようにご注意を!)
頼む・・・気づかないでくれ!!当たってくれ
いよいよ、「投石器」を使った草原での「狩り」が開始される。
前方200ヤード位のところに獲物がいる。
右には大きな池、左には小川。
手持ちの、投石に適した石には、限りがあるので。誤って、石を池や小川に落としてしまうと、勿体無い。
実際にいざ、獲物を目の前にすると緊張する。
気づかれると逃げられてしまう。
音を立てないように、静かにユックリと棒を振り上げる。
「頼む・・・気づかないでくれ!!そして当たってくれ。」
身体の捻転(ねんてん)の力を使って回転運動の原理で棒を石に当てて石を射出。
打ったボールが、約200ヤード以上前方にいる獲物めがけて飛んでいった。
「惜しい!外れた」
良い感じで獲物めがけて石が飛んで行ったのだが。残念ながら、ほんのわずかにずれてしまい、獲物は前方の方に逃げた。
僕たち3人は、馬に乗り込み獲物の向かった方向に前進。
今度は、約180ヤード位飛ばす「投石器」に持ち替えて投石。
再び獲物めがけて石が飛んでいく。
・・・今度は獲物にかすった。(ボールが2打でグリーンオン)
これで獲物を近くから狙うことができる。
これは幸先の良いスタート。
いきなり最初から獲物の獲得に成功するかもしれない。
興奮する気持ちを抑えるように、再び馬に乗って獲物近くに向かった。
(馬=カート。)
しかし・・・後一歩のところで、獲物に逃げられてしまった。
「矢ガモ」も矢で首を貫かれても普通に池で泳いでいたように、野生の獣の生命力は非常に強くちゃんと急所を貫かなければ倒すことはできない。
手負いとは言え、僕たちのような素人狩人にそう簡単に狩られてくれる野生の獣はいない。
「残念・・・」。
(1番ホールは、バーディートライからのボギー。。)
結局、3人の内、誰も最初に出現した獲物を狩ることができなかった。
気を取りなおして僕たちは、新たなる獲物を追い求めてさらに草原の奥深くへと進んでいく。
(2番ホールへ)
「もしも」が起こるとしたらそれはミライだけなのだ!
しかし、この後の僕は散々だった。
ここは草原とはいえ、どこまで進んでも、池や小川に囲まれている。
逆に、池や小川に面していない場所が無い。
「投石器」で石を打つ際、目の前に池があったり、草原脇側に小川が流れていたりすると、「リラックスしろ・・・」自分に言い聞かせても。
無意識で身体が固くなってしまうようで。
なぜか、石を池や小川の方に飛ばしてしまう。
一向に、標的の獲物を狩ることができないままでいる。
(池ポチャや小川に打ち込むOBばかりでなかなか「パー」が取れない。。。)
ただひたすら、獲物を追いかけ続ける。
「投石」をしながら草原を歩む中で気をつけなければならないのは、体力配分。
途中でなんとか水分を補給し続けているが。
炎天下で30度の気温の中、中々先に進めず体力を消耗する。
食事にありつけているのは1日1回のみ。
(「1日1食活動」継続中。)
体力が無くなるまでに、果たして獲物を狩れるのだろうか?
いざ獲物に直面したとしても、また外してしまうのではないだろうか?
なんて僕はダメダメなんだ・・・
お腹が減り続け、体力が減り続ける中で、次第に弱き陥っていく自分がいる。
そもそも最初から、「投石器」による狩りではなく別の方法があったのではないだろうか?
そうすれば、もっと楽だったんじゃないだろうか?
孔明:「いや、たらればを語ってもしょうがない。夢想しても、それで何かが変わったり起きたりすることはない。
過去に「もしも」は発生しないのだから!
「もしも」が起こるとしたらそれはミライだけなのだ!」
葛藤の中にも、立ち上がる気持ちを見出し、再び目をクワッと見開き、前進を続ける意志を持ち直す。
右を見るとP.Z.R.。左を見ると東大。
孔明:「僕は一人じゃない!狩人仲間がいるじゃないか!」
・・・しかし、「狩猟の世界」では、意志だけではなんとなならないこともある。
孔明:「ああくそっ、またダメだ。池ポチャだ!」
何度やっても、獲物を狩ることはできない。
一度、P.Z.R.、東大、孔明の「トライアングルフォーメーション」で、獲物を追い詰めたのだが。
最後の最後で、外してしまい、獲物は何事も無かったかのように、ピョンピョン僕たちの横をすり抜け逃げていってしまった。
(パーショットからの外しでボギー。。)
獲物が一匹も狩れないまま、ドンドン草原奥地へと進んでいく。
再び弱気が僕を襲う。
そもそも、自分が食べるために、獣クンたちを獲物と定め、「投石器」を打ち続けて、彼らが可愛そうじゃないか。。という気持ちも出てきてしまった。
僕ひとり生きるために、沢山の獲物を獲ってしまっても良いのだろうか?
僕たちは何のために、今この草原に立っているのか?
「僕が生きるため?獣クンたちを殺すため?」
今まで気づかなかった視点で物事を考え始める。
いや、これも違う。
そうやって考えてしまうのは、空腹だし、体力も無くなってくるし、もっともらしい理由をつけて、このキツイ状態から、逃げたいだけだ。
昔から僕は、「逃げる理由」をつくるのが得意だったよな・・・。
「逃げる理由」なら、いくらでも考えつく。
しかし、この草原において、そんな言い訳は誰も聴いてくれない。
獣クンたちを狩れなければ食べることはできない。
すなわち生きることはできない。
僕たちは今、生きるために生きる。
僕たちがヒトとして何不自由なく生きるためには、多くの動物クンたちや、植物チャンたちに犠牲になってもらわないとならない。
沢山の動植物、膨大な数の彼らの犠牲の元に僕たちが生きている。
彼らを食べて、僕たちの身体の細胞の一部となり、僕の身体が、心が成り立っている。
僕の身体は多くの動植物クンの集合体でもあるのだから。
「だから逃げること無くこのまま生き抜こう!」
失われかけていたモチベーションが再び戻ってきた。
そんな中、P.Z.R.、東大、孔明の「トライアングルフォーメーション」で、再び獲物を追い詰めた。
P.Z.R.が、まさに獲物に襲いかかろうとしている。
(P.Z.R.のパーチャンス)
P.Z.R.・・・東大と孔明が獲物を囲む中、短距離用の「投石棒」を静かに構える。
棒を石に向かって、ユックリと振り下ろした。
実際は3秒かそこらだったのだろうが、時が止まった状態で、石がスローモーションのように見える。
石が獲物の急所めがけ向かっていく。
「カコーン」
石が獲物に当たった音がした。
一同:「イエーイ!獲物仕留めたり!」
(P.Z.R.パー獲得。)
ようやく、一匹だけ獲物を仕留めることができた。
僕たちは一体何時間、炎天下の平原で、「投石」を繰り返していたのだろうか?
熟練の狩人たちからすれば、僕たちが頑張って「投石」を繰り返しながら、一向に獲物が獲れないチェリーな様子が、滑稽でたまらないかもしれない。
けれども、ようやく僕たちは、自分の力で獲物を仕留めることができたのだ!
胸の奥から、熱いモノがこみ上げてくる。
僕たちのために、命を落としてくれた獣。
獣を育ててくれた草原。
温かい気持ちが湧いてきた。
それは、「感謝の気持ち」。
僕たちは今、心の奥底から感謝をしている。
「獣クンたち、ありがとう!」
僕たちが生きるために犠牲になってくれる獣クンたちのおかげで、僕たちは生き続けている。
今日の狩りは終わった。
最後に、狩り素人集団の僕たちに、炎天下の中長時間お付き合い頂いた、近隣の村の女性たちに、お礼を述べると共に「肉の分配」を。
(キャディさんに300バーツのチップ)
今日の狩りを乗り越えて、少しだけ背中が大きくなった、僕たちは、狩場の草原を後にして、バンコク・スクンビット村で待つ生ける伝説の狩人でもあられる、長老ファーザーの元へと向かった。
ファーザーの「おともだち」30年以上生き残り続けた狩人ミスターセンスとその奥様。
若手狩人のフェニックス、P.Z.R.、東大の合計7人での宴となった。
炎天下の草原での狩り(ゴルフ)を乗り切り、空腹や体力消耗に耐え続けながら、ようやくたどり着いた宴の席。
まずは、村の女性たちが、(日本料理レストラン姉御の店員さんたち)金色に光り輝く泡の入った飲み物を持って来た。
聞けば、麦芽、ホップ、水に、米、コーン、スターチ、糖分などを加えて、煮る、発酵する、寝かす、冷やす・・・などの過程を経て完成する特別な飲み物のようだ。
一同:「乾杯!」
口に含むと、シュワシュワという触感と共に身体が熱くなる。
孔明:「う、うまい!こんなに美味しいものがこの世に存在するなんて!」
(飢餓状態の時に飲む生ビールは美味しいですね!)
鶏肉、牛肉、豚肉、魚。
酒に肉のご馳走、
至高の宴。
お腹一杯に食べて飲んだ夜は、よく寝れる。
こんな特別な日が、ずっと続かないかな・・・。
そう願いながらいつの間にかまどろんでしまっていたが。
しかし、次に目を開けた時には、再び朝がやってきてしまう。
僕たちの「狩猟時代」の狩人としての活動はまさに始まったばかりだ。
追伸
・・・というような、日々を妄想の世界ではなく、ガチで送ってこられた、はるか昔の狩猟時代に生きたご先祖様たちに感謝。
こうした過酷な世界で生き残り続け、子孫へと紡ぎ続けたお蔭で、今、僕たちは生きている。
日常の視点を変えるだけで、人生もっと面白くなる。
「お金」の世界も、視点を少し変えるだけで・・・
あなたは借金が怖いですか?
私は死ぬまでに<1,000兆円>の借金をすることが夢なのですが…